海外から商品等を輸入する際、関税だけでなく消費税が課税対象になります。
輸入取引に対する消費税と国内取引に対する消費税の計算方法は違いますし、経理処理にも異なる部分があるため、本記事で輸入消費税の取扱いと経理処理を行う際に注意すべきポイントについて解説します。
目次
消費税の課税対象になるケースとは
消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して課される税金で、事業者が日本国内において対価を得て行う取引は、原則、消費税の課税対象です。
消費税が課されることになれば会計処理はもちろんのこと、消費税の申告・納税手続きも必要になります。
一方、国外取引で消費税の課税対象になるのは、特定仕入れおよび保税地域から引き取られる外国貨物の引取り(輸入取引)に限られ、国外で行われる取引や資産の譲渡等に該当しない取引は消費税の課税対象になりません。
海外に商品等を輸出して商品を販売するときは消費税が免税となりますが、外国から商品等を輸入する取引は消費税の課税対象となります。
また、国内取引で消費税が課されるのは対価を得て行う取引に限られているのに対し、輸入取引においては、対価性のない取引(無償取引)についても消費税の課税対象となるのでご注意ください。
消費税法基本通達5-6-2(無償による貨物の輸入等)
保税地域から引き取られる外国貨物については、国内において事業者が行った資産の譲渡等の場合のように、「事業として対価を得て行われる」ものには限られないのであるから、保税地域から引き取られる外国貨物に係る対価が無償の場合又は保税地域からの外国貨物の引取りが事業として行われるものではない場合のいずれについても法第4条第2項《外国貨物に対する消費税の課税》の規定が適用されるのであるから留意する。
引用:国税庁ホームページ
輸入取引における消費税の納税義務者
消費税は消費者が税を負担し、事業者が納付する仕組みとなっている関係上、消費者が直接消費税を納付する必要はありません。
しかし、消費者個人が直接物品を輸入する場合においては、消費税を納付する者が不在となり、国内で国産品を購入する場合と比べて税負担に不均衡が生じることから、状況次第で消費者が納税義務者になるケースも存在します。
国内取引における消費税の納税義務者は、国内で課税資産の譲渡等および特定課税仕入れを行う事業者であり、納税義務者となるのは事業者に限られます。
しかし、輸入取引は課税貨物を保税地域から引き取る者が消費税の納税義務者となり、消費者個人が輸入者となる場合には、個人であっても納税義務者となります。
輸入取引に際して発生する消費税の計算方法
保税地域から引き取られる外国貨物の課税標準に対して課される消費税は、原則引取りの時までに輸入申告書の提出を行い、消費税を納付することになります。
輸入消費税は、CIF価格に消費税以外の個別消費税の額および、関税の額に相当する金額を加算した合計額(外国貨物の課税標準)に対して税率を乗じて算出します。
<輸入消費税の計算式>
課税標準額(CIF価格+関税)×10%(消費税)=輸入消費税
CIF価格はインコタームズ(国際貿易取引条件)のひとつで、運賃や保険料込み条件の貿易価格をいい、本船渡し条件価額であるFOB価格に、仕向け地までの運賃と保険料を加えた額がCIF価格です。
輸入消費税の会計処理のしかた
輸入取引に係る消費税の会計処理を行う場合には、以下の点に注意してください。
<輸入取引の仕訳を行う際の注意点>
①本体価格×消費税率(10%)で消費税を算出することができない
②国内取引と輸入取引にかかる仕入れは区分しなければならない
③輸入消費税は国内取引の仮払い消費税と区分しなければならない
国内取引にかかる消費税は本体価格に消費税率を乗じることで算出することができますが、輸入消費税のベースとなる課税標準額は「CIF価格+関税」ですので、本体価格が同額でも、国内取引と輸入取引では算出される消費税額が異なります。
また、税額計算の算出方法が異なる関係上、仕訳をする際には国内取引と輸入取引を区分する必要があります。
<輸入消費税の仕訳イメージ>
輸入取引について、下記の金額を支払った場合
①商品 3,000円
②海外運賃 100円
③保険料 50円
④関税 150円
⑤輸入消費税(国税)200円
⑥輸入消費税(地方税)50円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
仕入 | 3,000 | 現金 | 3,550 |
仕入 | 100 | ||
仕入 | 50 | ||
仕入 | 150 | ||
仮払消費税 | 200 | ||
仮払消費税 | 50 |
なお、「仕入」の勘定科目に振り分ける商品本体、海外運賃や保険、関税についての税区分は、輸入本体とします。
輸入消費税の税区分は、国税部分を輸入消費税とし、地方税部分を貨物割とします。
税区分は会計ソフトによって名称が異なりますが、説明書きがありますので、合致するものを設定してください。
輸入取引の係る消費税の申告・納税方法
輸入取引に係る消費税の納税義務者となった場合、消費税額などを記載した申告書を保税地域を所轄する税関長に提出しなければなりません。
輸入取引に係る消費税の納税地は、課税対象となる外国貨物を引き取る保税地域の所在地(その保税地域を所轄している税関の所在地)ですので、国内取引に係る消費税とは納税地が異なります。
消費税の納付は、原則として外国貨物を引き取るときまでに行わなければなりません。
ただし、税関長に納期限延長承認申請書の提出および担保提供をした場合には、担保額の範囲内の消費税額において、最長3か月間納期限を延長することが可能です。
まとめ
輸入取引は消費税の対象になりますし、会計処理を行う際は国内取引と区分して仕訳をしなければなりません。
輸入取引は関税等が関係することから、本体価格に税率を乗じるだけで税額を算出できないなど注意点も多く、申告漏れや計算や誤りがあれば指摘を受けることになるので気を付けてください。