日本国内の居住者が国外で税金を支払っている場合、所得税の外国税額控除を適用できる可能性があります。
外国税額控除は要件をクリアするだけでなく、手続きする際に提出すべき書類もあるため、本記事で所得税の外国税額控除の適用要件および、計算方法について確認してください。
目次
所得税の外国税額控除の概要
日本に住んでいる人は、国内外の所得すべてが課税対象となりますが、国外で受取った所得については、所得が発生した国でも税金が課される場合があります。
所得税の外国税額控除は、その年において外国の法令により所得税に相当する租税を納付することになる場合、外国で納めた税金(外国所得税)をその年分の所得税額から差し引くことができる制度です。
所得が発生した国と住んでいる国の双方で税金が課される状態は二重課税であり、外国税額控除の規定は、納税者の二重課税による負担を調整する目的で定められています。
外国税額控除の適否は納税者が判断することになりますので、二重課税を回避するためにも、日本国外で税金を納めている方は適用要件を確認することが求められます。
所得税の外国税額控除の対象となる外国所得税の範囲
所得税の外国税額控除は、所得税に相当する租税を対象としていますので、所得税以外の名目で納めた税金も対象になります。
外国所得税の種類
外国所得税は、外国の法令に基づき、外国またはその地方公共団体により個人の所得を課税標準として課される税をいい、対象となる外国所得税は次の4種類です。
・ 超過所得税、その他個人の所得の特定の部分を課税標準として課される税
・ 個人の所得または、その特定の部分を課税標準として課される税の附加税
・ 個人の所得を課税標準として課される税と同一の税目に属する税で、個人の特定の所得につき、徴税上の便宜のため、所得に代えて収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課されるもの
・ 個人の特定の所得につき、所得を課税標準とする税に代え、個人の収入金額その他これに準ずるものを課税標準として課される税
出典:居住者に係る外国税額控除(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
外国所得税の対象から除かれるもの
外国またはその地方公共団体により課される税のうち、次に該当するものは外国所得税には含まれません。
・ 納税者が納付後に、任意で納付金額の還付を請求することができる税
・ 納税者が納付猶予期間を任意に定めることができる税
・ 複数の税率の中から税を納付することとなる人と、外国またはその地方公共団体から税率を合意する権限を付与された者との合意により、税率が決定された税のうち一定の部分
・ 外国所得税に附帯して課される附帯税に相当する税、その他これに類する税
また、外国所得税に該当する税であっても、外国税額控除の対象にならないものもあるのでご注意ください。
<居住者に係る外国税額控除の対象にならない主な外国所得税額>
・ 通常行われる取引と認められない、一定の取引に基因して生じた所得に対して課される外国所得税額
・ 居住者の国外事業所等の所在する国または地域において課される、一定の外国所得税の額
・ 外国において課される外国所得税額のうち、外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律の規定により、外国居住者等の対象国内源泉所得に対して所得税を軽減し、または課さないこととされる条件と同等の条件により軽減することとされる部分に相当する金額または免除することとされる額に相当する金額
・ 居住者の所得に対して課される外国所得税額で、租税条約の規定において外国税額控除をされるべき金額の計算に当たって考慮しないものとされるもの
外国税額控除の計算方法
所得税の外国税額控除には上限が設けられており、次の「外国税額控除の計算式」で求めた額が控除限度額となります。
<外国税額控除の計算式>
対象年分の所得税額 ×(対象年分の調整国外所得金額 ÷ 対象年分の所得総額)= 所得税の控除限度額
外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合には、次の「復興特別所得税の控除限度額の計算式」で求めた金額を限度として、その超える金額をその年分の復興特別所得税額から差し引くことができます。
<復興特別所得税の控除限度額の計算式>
対象年分の復興特別所得税額 ×(その年分の調整国外所得金額 ÷ その年分の所得総額)= 復興特別所得税の控除限度額
「対象年分の所得税額」は、税額控除(配当控除や住宅ローン控除など)、災害減免額を適用した後の所得税額をいいます。
「対象年分の所得総額」は、所得税の繰越控除等を適用している場合には控除前の総所得金額と、譲渡所得および山林所得、退職所得等を合計した額です。
「対象年分の調整国外所得金額」は、所得税の繰越控除等を適用している場合には控除前の国外所得金額をいいます。
ただし、国外所得金額がその年分の所得総額に相当する金額を超えるときは、その年分の所得総額に相当する金額を対象年分の調整国外所得金額とします。
外国税額控除を適用する際の手続き
居住者に係る外国税額控除の適用を受けるためには、次の書類を確定申告書等に添付する必要があります。
日本と日本以外の国では税金を納める時期が異なるため、納税が発生する場合や納税額に変動があった際は、修正申告・更正の請求等の手続きが必要です。
<外国税額控除の必要書類>
・ 外国税額控除に関する明細書
・ 外国所得税が課されたことを証明する書類
・ 外国所得税に該当する説明が記載された書類
・ 外国所得税の納付を証明する書類
まとめ
日本国外で収入を得ている方は外国税額控除を適用できる可能性がありますが、税制は国ごとに違いますので、ケースごとに適否判定をしなければなりません。
税務署は海外関係の所得はチェックが厳しく、海外関連の租税回避行為は国税当局が近年問題視しています。
申告誤りや申告内容に疑義があった場合、税務調査が入ることも考えられますので、外国税額控除を適用する際は要件や手続きについて、専門家にご相談することをオススメします。